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育毛剤で薄毛は治療できる?生える効果までは期待できない理由

スプレー

インターネットで薄毛について調べていると、育毛剤が紹介されているページに出会うと思います。まことしやかに「生える!」と案内されていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

また、あまり効果が見込めないならどうして「育毛剤」という名前が割り当てられるのでしょうか。「育毛剤」とはそもそも何なのか…。なぜ発毛効果が限定的なのか?このあたりについて解説します。


育毛剤は「医薬部外品」予防や衛生目的で使用されるもの

育毛剤

以前、「発毛剤」と「育毛剤」の違いに関するコラムでもご紹介しましたが、育毛剤は「医薬部外品」というカテゴリーに分類されます。

一方の発毛剤は「医薬品」に該当し、同系列で住み分けられているものとしては「化粧品」もあります。これらは「薬事法」によって定められている区分けであり、効果や効能の範囲が明確に異なります。

医薬品と医薬部外品と化粧品の分類

  • 医薬品…病気の診断や治療、予防に使用されることを目的としたお薬
    (厚生労働省より有効成分の効果が認められたもの)
  • 医薬部外品…病気の治療といった直接的な作用ではなく、間接的な予防や衛生を目的としたもの
    (人体への影響が緩和なもので、医学的なエビデンスの取れた発毛効有効成分などは含まれていない)
  • 化粧品…清潔にしたり、美しく見せる、魅力的にする、健康に保つといった目的で使用されるもの
    (たとえば、ニキビの予防、皮膚の殺菌などの作用は「効能」に該当するため、化粧品では表示できない)

「発毛剤」の概念整理

医薬品に分類される「発毛剤」は、有効成分によって一定の発毛効果があることが厚生労働省によって認められています。たとえば、「リアップ」という発毛剤にはミノキシジルという薬用成分が1%もしくは5%配合されています。

薬用濃度としては少し限定的ではありますが、この効果が髪にプラスに働くことは正式に評価されていますので、育毛剤よりは毛髪の回復を狙いやすいと言えるでしょう(ただし、実際の医療現場では発毛剤よりもさらに強力な「内服ミノキシジル」を使用するのが一般的です。)。


「育毛剤」の概念整理

育毛剤は、あくまでも予防や衛星を目的とした商品に過ぎません。含まれている成分は各メーカーが独自の研究で導き出したものになっており、たとえばビタミン剤や海藻抽出成分、生薬など様々なものが配合されています。

人によって「効いた」と実感されるケースも考えられますが、薬事法による分類としては医学的エビデンスの取れた成分は配合されていないため、あくまでも「抜け毛の予防」や「頭皮上の衛星を狙ったもの」という域を出ません。


「化粧品」はさらに効果が限定的

化粧品に関しては当コラムの趣旨から外れます。効果の有効性というよりは「表面的な美」をサポートするものだと考えられます。効果のある順に並べた場合、「医薬品」→「医薬部外品」→「化粧品」という位置関係になっていることを把握していれば良いでしょう。


「育毛剤」では結局生えないワケ

育毛剤はあくまでも頭皮環境を清潔に保つものです。髪の「育ち」を阻害するような表面的な要因を取り除けるように配慮したという意味で「育毛」という言葉が選ばれたのでしょう。

少し強引ではありますが、「発毛」のように「生えること」ではなく「育てること」にフォーカスしたものになるため、発毛効果を期待するのはやはり無理があります。

「清潔に保てていないと髪が育ちにくくなる…」という影響はもちろんございますが、今薄毛に悩んでいる人が「清潔にしたから髪が生えてくる」ということにはなりません。

これは、薄毛原因の多くが頭皮環境の清潔さとは別のところにあるためです。


AGAの薄毛の原因:ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモン

男性ホルモン

多くの男性が陥っているAGAという薄毛症状は、男性ホルモンを発端として発現するものになります。前頭部や頭頂部の毛根内に存在する「5αリダクターゼ」という還元酵素が作用すると、血流に乗って頭皮にたどり着いた善玉の男性ホルモン(テストステロン)が悪玉の男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」へと変化してしまいます。

DHTが産出されてしまうことでヘアサイクルが攻撃を受けてしまい、これによって髪が育ちにくくなっていくのがAGAの大まかな流れです。このような毛根内の薄毛化メカニズムを理解すると、「育毛剤」で頭皮を清潔に保ったからといって薄毛に悩む人の髪が生えてくるわけではないことが理解いただけると思います。

毛穴の詰まりや汚れは、確かに発毛力にマイナスの影響がありますが、これは過度に慢性化している場合の話であり、一般的に毎日洗髪を欠かさない日本人にはあまり当てはまりません。


5αリダクターゼの量は遺伝体質 内服治療こそが有効!

薄毛の根本的な原因は「ジヒドロテストステロン(DHT)」だとわかっています。前頭部や頭頂部で産出されているDHTの量を抑制できれば頭皮上の毛根への攻撃が緩和し、髪の発育も戻っていきます。

ところが、DHTが作られるかどうかは「5αリダクターゼ(還元酵素)」の量次第という側面があり、この還元酵素の量は「遺伝的な体質」として受け継がれるものだとわかっています。

つまり、「5αリダクターゼ」の量は外から減らすことができないため、DHTの産出を抑制するには「テストステロン」と「5αリダクターゼ」の結合をブロックしてくれる存在が必要になります。


「プロペシア」や「ザガーロ」が薄毛メカニズムをブロック!

AGA治療で使用されることの多い「プロペシア(成分名:フィナステリド)」や「ザガーロ(成分名:デュタステリド)」といったお薬には、上述したような「テストステロン」と「5αリダクターゼ」の結合を抑制してくれる作用があることが医学的にわかっています。

このため、既にある程度薄毛が進行している男性の場合には、「発毛剤」や「育毛剤」に頼るのではなく、当院のような専門のクリニック(医療機関)で処方薬を受け取ることが有効になってきます。

「発毛剤」のところでご紹介した「ミノキシジル」の効能については、「プロペシア」や「ザガーロ」のような内部メカニズムに作用するものではなく、あくまでも「血管拡張作用」をベースとした血流の改善が期待できるものです。厚生労働省が認可しているのは、頭皮上の毛細血管の血流が改善され、毛根への栄養供給がスムーズになるという「ミノキシジル」の薬事作用です。

これによって「髪が生える」かどうかは、「髪の毛根組織にDTHがたくさん存在していないこと」という前提条件が必要になります。どれだけ風呂釜にたくさん水を流し込んでも、底や側面に穴が開いていれば意味がないのと同じことで、ミノキシジルは「プロペシア」や「ザガーロ」」でしっかりと薄毛メカニズムをブロックしたうえで使用すべきものになっています。

医薬品として薬理効果が認められている「発毛剤」でさえこのような状況ですので、医薬部外品に属する「育毛剤」では、薄毛に苦しむ人のお悩みを解消することはほぼ不可能だとお考えください。


やっぱり薄毛治療は専門医!お気軽にご相談を♪

AGAという薄毛症状は、インフルエンザや喘息などの明確な病とは少し異なったものとして捉えられますが、「お体の内部メカニズムによって表出する思わしくない症状」という点では同じものだと考えられます。

病気になったときは専門の医療機関を受診するのがもっとも早い解決手段になりますので、「薄毛ぐらいで…」と身近な「育毛剤」を選択してしまうのではなく、どうぞ当院のようなクリニックにご相談ください。随時「無料カウンセリング」を実施していますので、お気軽にご活用いただけますと幸いです。